第261話 弥生時代にも
たらされたやまとことば
大野晋は『日本語の起源』(旧版)で弥生文化は
中国、朝鮮の影響を強く受けていて、日本語もまた、大きな影響をうけているとしている。
縄文時代の後に、弥生時代がくる。西暦紀元前
三世紀ごろに始まるその時代は、はじ めて稲を作り、機織を持ち、金属器を使い、巨
大な石を置いた墓に人を葬り、甕の棺 に死人を入れて埋めるなど、縄文時代とはまっ
たく異なる文化の時代を作り出した。、、 その根源の刺激は外部から与えられてた。外部
とは南朝鮮であることも、異論はなく なっているようである。 それを言葉の方から確かめようとすれば、明ら
かな証拠を見ることができる。日本語 と朝鮮語との間には、そうした文化に関する語彙
の類似するものが少なくない。 こういう農業関係の多くの単語が朝鮮語と類似して
いるのは、いかに日本の農業が朝 鮮経由の技術によって開発されたものであるか
をよく示している。(p.124)
として、次のような例をあげている。<>は朝鮮
語
pata((畑))・<pat>、nata((鉈))・<nat((鎌))、taku((𣑥))・<tak>、 sade((小網))・<sadul>、sape((鉏))・<stapo((耜))>、kupa((鍬))・<xomai((鋤))>、 sitöki((粢))・<stök>、kusi((串))・<kot>、pera((犂))・<pyöt>、
稲作、畑作、養蚕、家畜などに関する語彙につい
て中国語との関係を調べてみると、日本語との音韻対応のみられるものがかなりみられる。
秈[shean](セン・いね)、田[dyen](デン・た)、米[(h)mei*](ベイ・こめ)、苗[miô] (ビョウ・なえ)、種[diong](シュ・たね)、芽[ngea](ガ・め)、茎[heng](ケイ・く き)、鎌[(h)liam*](レン・かま)、鋤[dzhia]・鉏[dzhia]・鍬[tsiu]・耜[ziə](すき)、蔵 [dzang]・倉[tsang]・庫[ka](くら)、畑・火+田[xuəi-dyen](はた)、麦[muək](バク・ むぎ)、蕪[miua](ブ・かぶ)、蛺蠱[kyap-ka](かひこ)、馬[mea](バ・うま)、牛[ngiuə] (ギュウ・うし・<朝鮮語・so>)、羊[jiang](ヨウ・やぎ<山羊>)、犬[khyuan](ケ ン・いぬ)、猫[miô](ビョウ・ねこ)、鳥[tyô](チョウ・とり)、卵[luan](ラン・たま ご・<蛋[tan](タン・たまご)>、魚[ngia](ギョ・うお)、
日本語の語彙は圧倒的に中国語と同源のものが多
く、文法の構造は朝鮮語と共通のものが多いのではなかろうか。
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